
前回は「何歳まで生きるか分からないからこそ、年金は頼りになる存在である」と、お話ししました。今回は、その年金の増やし方をご紹介しましょう、
年金を増やす方法1「できるだけ長く加入する」
年金を増やす方法の1つめは、「できるだけ加入期間を長くする」です。
国民年金は、20歳から60歳までの最大40年間(※1)、厚生年金は最大70歳まで加入することができます。どちらの年金も、加入期間が長ければ長いほど、年金の受給額は増えます。
当たり前のことではないか…と、思った人もいるかもしれません。ですが、「未納期間」といって、保険料を納めていない期間があると、将来受け取る年金が減ってしまいます。
会社員の人であれば、毎月のお給料から年金保険料が天引きされています。原則、未納期間はないと考えて良いでしょう。ただし、転職や退職の際に、会社に勤めていない期間があれば、その間は自分で保険料を納める必要があります。
注意したいのは、フリーランスや自営業の人や、20歳以上の学生の人です。これらの人は、常に、自分で保険料を納める必要あります。

もし、保険料を支払っていない期間があった場合は、後から国民年金保険料を納めることができる制度があります。免除や納付猶予、学生納付特例を届け出ていた人は「追納制度」が利用できます。
追納は、年金事務所で申し込みを行います。最寄りの年金事務所は、日本年金機構のウェブサイトで検索できます。
(※1)原則60歳までの加入となりますが、加入期間が40年に満たない場合は、65歳まで任意加入することもできます。
年金を増やす方法2 「繰り下げ受給」
加入期間を長くする以外にも、年金を増やす方法があります。年金の受給開始を遅くする「繰り下げ受給」です。
年金は、本来65歳から受け取り始めますが、繰り下げ受給を選択すれば、66歳以降の希望する時点に受給開始を遅らせることができます(※2)。
受給開始を1ヶ月遅らせるごとに金額は0.7%増え、上限の70歳まで遅らせると42%増額されます。増額された支給額は一生続きます。65歳以降も働いて収入を得られる、あるいは当面の生活費に余裕があれば、受給開始を遅らせると良いでしょう。

仮に、受給開始を66歳に繰り下げた場合、受取総額は77歳10ヶ月で65歳受給開始の受取総額と同額に。上限の70歳まで繰り下げると、65歳受給開始の受取総額と同額になるのは81歳10ヶ月で、それ以降は差が広がっていきます。効果があらわれる年数も気になるでしょうが、年金は保険。増えた年金額で生活設計がたてられるという安心感が得られます。
夫婦の場合は、夫と妻の受給開始時期をそれぞれ選ぶことができます。女性の方が平均寿命が長いため、夫は65歳から受け取り、妻の年金は繰り下げるという方法も良いですね。また、国民年金と厚生年金も、それぞれ違う時期に繰り下げることもできます。
(※2)遺族年金や障害年金、厚生年金保険などによる年金を受給している人など、繰り下げることができない場合もあります。
年下の配偶者がいる場合 厚生年金の繰り下げに注意
ただし、会社員として働き、年下の配偶者がいる場合は、厚生年金の繰り下げ受給に注意してください。厚生年金への加入期間が20年以上ある夫が65歳になったとき、65歳未満の妻がいれば、夫の年金に年額39万900円が上乗せされる「加給年金」という制度があります。(※条件あり)

この「加給年金」は、厚生年金の受給を開始しないと支給されません。仮に、65歳の夫と64歳の妻の場合、夫が厚生年金の受給開始を1年間繰り下げると、加給年金は全く受け取れないことになります。
前述した通り、国民年金と厚生年金は別々に繰り下げができますので、厚生年金だけ先に受給を開始して、国民年金は繰り下げる、という方法が良いかもしれませんね。
増額した年金 一生涯続く
いかがでしたでしょうか。
未納期間をなくしたり、繰り下げ受給をすることで、年金は増やすことができます。1ヶ月あたりに増やせる金額はわずかであっても、死亡するまで受け取れることを考えると、家計の助けとなることは間違いありません。
また、国民年金や厚生年金にさらに上乗せできる「iDeCo」という制度もあります。

iDeCoの正式名称は「個人型確定拠出年金」といいます。確定拠出年金は、確定給付年金と違い、将来受け取る年金の額が決まっていません。
というのも、iDeCoの加入者は、専用の個人口座に掛け金を拠出し、あらかじめ選ばれた商品の中から、自分で運用先を選びます。選んだ商品の成績次第で、将来受取る年金額が異なるのですね。自分で運用できる年金、と考えても良いかもしれません。
iDeCoに積み立てたお金は60歳まで引き出せませんが、掛け金が全額控除(税金が安くなります)、運用益が非課税(通常は20.315%の税金がかかります)、受け取り時には「退職所得控除」あるいは「公的年金等控除」が利用でき、老後の資金作りにはもってこいの制度です。
60歳まで引き出せないことに注意しつつ、是非とも活用して頂きたいところです。
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