前回は、老後の対策を具体的にご紹介すると述べました。

が、実はすでにすでに皆さんは老後対策の1つを実行しています。「公的年金」への加入ですね。年金は亡くなるまで受け取れる、老後の生活費を支える土台ともいえる存在です。

年金というと、あまり良いイメージがないかもしれません。「少子高齢化で年金制度はもたないのではないか」「保険料を払うだけ損するのでは」と思いながら、保険料を支払っている(天引きされている)人もいるのではないでしょうか。決して安くない年金保険料。不安になる気持ちは分かります。今回は、こうした誤解をときたいと思います。

年金制度はなくならない

まずは「年金制度はもたない」という誤解です。

年金は「賦課方式」といって、現役世代が納めた保険料を原資にして、年金の給付を行なっています。また、国民年金(老齢基礎年金)の給付は、保険料だけではなく、半分を税金で賄っています。極端な話ですが、税金や保険料を納める人がいる限り、給付が止まることはありません。

少子高齢化の対策も行われています。「今年上半期のGRIFの運用益は〇〇円だった」というニュースを聞いたことはないでしょうか。GRIF(年金積立管理運用独立行政法人)は、将来の年金給付に備えて、約160兆円の積立金を運用している組織。運用している積立金は、これまで支払われた保険料の一部を少しずつ蓄えてきたものです。

この先、高齢者が増え、保険料を支払う人が減ったときに、この積立金の一部を、年金の原資として使う割合を増やします。2040年頃から本格的に取り崩し、以降100年間の平均で給付の1割を負担する予定です。

いかがでしょうか。日本全体が再起不能になるような出来事が起こらない限り、年金制度は持続すると考えるのが自然です。

年金は「保険」である

次に、「損をするのではないか」という誤解です。

支払った保険料分を受け取る前に死亡したら損をする、それはその通りです。早く亡くなってしまった場合は、支払った保険料の総額を受け取れない可能性があります。ですが、亡くなると、もうお金は必要ありません。年金の目的は、あくまで亡くなるまでの生活費を支えること。何歳まで生きるかわからないリスクに備える「保険」なのですね。

また、年金の支給額は、物価や賃金に合わせて調整されます。物価が上がれば、それに応じて支給額も上昇します(物価の上昇率より低く抑えられますが)。将来の物価の上昇リスクにも備えているといえますね。物価が下がれば受給額も下がりますが、買うことができるモノやサービスの水準は保たれるでしょう。

その他、年金には、老後に受け取る「老齢年金」だけではなく、障害や死亡への保険機能もあります。障害を負ったときに給付される「障害年金」や、世帯主が死亡したとき遺族に給付される「遺族年金」です。こうした保障内容を知らずに、民間の保険に加入している人は、必要以上に加入しているかもしれません。一度、障害年金と遺族年金について調べてみましょう。

フリーランスの人は注意を

ただし、注意が必要なのは、自分で保険料を納めなくてはならないフリーランスや自営業者などの人。未納になると、老後の年金を受け取れないばかりか、いざというときの障害年金や遺族年金も受け取れません。

さらに、会社員の人と違い、厚生年金には加入していませんので、受け取れるのは老齢基礎年金(国民年金)だけ。2020年度の老齢基礎年金は、満額(40年間納付)で、年間78万1700円、月額で6万5141円です。老齢基礎年金の給付だけで生活するのは難しい状況です。iDeCoや国民年金基金などに加入し、年金を上乗せするなどの対策をとる必要があります。

こうした年金を増やす制度については、次回ご紹介します。

関連図書

井戸美枝オンライン講座

「一般論はもういいので、私の老後のお金「答え」をください!」を解説したオンライン講座です。